大工の成り手が少ないという嘆き

モノづくり塾を建設した山梨県上野原市。昨年辺りに大きな製材所がなくなりました。後継者がいないのです。山林だらけの地域に製材所がないというのもビックリですね。

そんな上野原では大工の成り手が少ないそうです。

同様の話をよく聞きますが当然だと思います。

この写真は消防法による規定で取り付けなければならない標識です。薄いプラスチック(?)のようなものでできた標識。これを取り付けるのは有資格者という決まりがあって、消防の検査のときにやってきた業者の方が取り付けました。後日請求書を渡されてびっくり。請求金額が2万2千円。取付作業は一瞬と言えるくらい短いのです。業者の方がここへ来るのも地元の方なので車で数分から数十分です。

行政の許認可にぶら下がって仕事をする有資格者がたくさんいます。建築士さんもそうですが、消防の検査の際に1時間ほど立ち会って請求額が3万円。往復の時間を入れてもせいぜい2時間。

一方で大工さんの日当はだいたい2万円です。2万円で7時間ほど汗水垂らして、時には危険を冒して働きます。

わかりやすい例を挙げているだけで、誰が悪いという話ではないので当事者の方は機嫌を悪くしないでください。これは国家の根本問題だと思っていますので、そのつもりで読んでください。

大工の1日のコストが2万円、建築士の1時間か2時間のコストが3万円です。生産コストが非生産コストの数分の1という数値です。

こういう状況で「大工の成り手がいない」「モノづくりが衰退している」「若者の就職がなくて可愛そう」などと嘆くのはおかしいと思いませんか?

ロボットが完全な家を建てることができるようになれば建築士さんだけでも家は建つと思いますが、そこまで技術が進むころには設計はAIがやりますから建築士は不要です。そうなるまでは建築士がいなくても大工がいれば家が建ちますから、当面は大工の方が重要な仕事です。

地方創生、人手不足、少子化、高齢化などと騒いでいますが、真っ先に許認可に関わる業務の一切をAIに移行するような施策を打ち立ててはどうかと思います。士業はすべてAIに移行すれば良いです。

許認可(行政)の配下に多くの資格者(士業)がぶら下がっている構造です。この構造全体は役人勢力と言っても良いです。それ以外の国民は役人勢力を食わせるために働いているという形になっています。3D CADで作った建築物の設計データを送信すればAIが許認可業務をやってくれる、そうなると良いですね。そうなることを前提に教育の中にCADを取り込んでいけば良いです。身につけたCADの知識や技術は建築以外にも活用できます。

私の持論ですが、人はいつまでも生きられる訳ではないから、自分の仕事や地位は無くなるか誰かに譲る時が必ずきます。仕事を持って墓には入れません。だから自分の仕事がなくなるように仕事をしてはどうかと思っています。自分ができることを自分の専権事項とはせずに、どんどん他人(主に次世代や若手)に譲る。自分は次の別のことに挑戦して新たに仕事を作れば良い。そう提案しています。

自分の権益や勢力を維持拡大したいという欲望があるのは仕方ないとは思いますが、仕方ないと言っていると大工の成り手は増えません。人生100年時代と言われますが、50年生きたら残りの50年は仕事や地位を自分から引き剥がすように人生設計してはどうでしょうか。

もしこの投稿が行政の方の目に触れることがありましたらよく考えて欲しいのです。許認可をAI化するから教育にAIやCADを取り入れるといった合理的な施策やビジョンを持っていただきたいです。

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