温室ビジネス

世の中には、風を恐れる人たちがいる。
寒さに震えることも、土にまみれることもなく、温室の中で「社会貢献」を語る。

NPOという制度は、その温室を提供する装置だ。
外の市場に出れば一瞬で淘汰されるような事業でも、助成金のぬくもりの中では、立派に生き延びる。

彼らは口を揃えて「地域のため」と言う。
だが、その地域が自力で立ち上がることを、本当は望んでいない。
なぜなら、それが自分たちの“仕事の終わり”を意味するからだ。

補助金という延命装置

多くのNPOは、理念ではなく予算から始まる。
「この補助金に応募できる事業を考えよう」と。
つまり目的ではなく、手段が先にある。
その結果、活動は助成金の申請周期に合わせて回り続ける。

彼らが作っているのは社会ではなく、報告書だ。
そこでは言葉がすべての成果になる。
実態が伴わなくても、「やった」と書けば済む。
こうして、善意の名を借りた“延命装置”が完成する。

熱を失った理想

もちろん、最初から悪意があるわけではない。
始まりには、たしかに理想があったはずだ。
だが、助成金の申請書に慣れてくると、言葉が現実を超えて先に歩き出す。

「社会を変える」という標語は、いつの間にか“社会を保つ”ための免罪符に変わる。
本気で変えようとすれば、対立や摩擦が生まれる。
温室ではそれが嫌われる。
だから、やさしい言葉だけが増えていく。

善意の市場

温室ビジネスの怖さは、誰も悪人がいないことだ。
みんなが良いことをしていると信じている。
だが、善意だけで構築された市場ほど不健全なものはない。

そこでは、成果が測定されない。
「がんばっていること」自体が価値になり、失敗しても責任は問われない。
結果として、真面目な人ほど疲弊し、ずるい人ほど長く残る。

土の上に戻る勇気

温室の外には、風も泥もある。
だが、そこにしか新しい芽は出ない。
本当に社会を変えたいなら、
自分の金で、自分の責任で、現場に立つしかない。

補助金ではなく、売上で立つ。
理想ではなく、現実を相手にする。
そうして初めて、「地域を支える」という言葉が意味を持つ。

温室の中にいる限り、社会は育たない。
それはぬるま湯のように心地よいが、そこに根は張らない。

最後に やさしさの暴力

私は、やさしさが怖い。
何も変えないまま「共感」だけを配るその姿が、人を無力にするからだ。

本当に支援したいなら、相手が自立するまで一緒に苦しむ覚悟が要る。
やさしさとは、痛みを分け合うことだ。
そこにリスクがなければ、それはただの演技だ。

NPOという温室が、再び風を受ける野原になる日は来るだろうか。
それを決めるのは、制度ではなく、温室の外に出る人間の勇気だ。

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