モノづくり塾では、朝一番に便所掃除をします。素手でやります。
塾生が作業しているときは、床に落ちた木屑を静かに掃いて整えます。
これには三つの理由があります。
1. 掃除をすると心が整う
まず、自分のためになります。
2. 掃除をすると環境が整う
次に、他の作業者のためになります。
3. 権威にならないため
塾長が便所掃除をするのは、権威性を捨てるためです。
私は昔から、物事を構造として捉える癖があって、何かを見るたびに、「これはどういう構造で動いているのか」と考えてしまいます。
その視点を徹底すると、世の中の現象の多くが説明できることがわかってきました。
政治団体やコミュニティが分裂するのは、構造上そうなるようにできているから。
「ああ、また始まったな」と静かに眺めています。
構造が変わらなければ、人が変わっても似たようなことを何度も繰り返します。そして、あいつが悪い、こいつが悪いと言いはじめます。
「ああ、また始まったな」になります。
権威者をつくると、次のような現象が必ず起きます。
- 権威者の機嫌取りが始まる
- 意見が違う者を敵とみなすようになる
- 組織が宗教化する
- 権威者がいなくなると理念が歪む
- 「誰が権威に近いか」という競争が始まる
みなさんの周りにも、こうした集団はよく見かけるでしょう。
これは、理念で引っ張る集団が持つ典型的な構造で、歴史的に何度も繰り返されています。
構造が因となり、分裂・崩壊・解散が果として現れます。
ただ、それだけのことです。
だから塾長が便所掃除をするのは、権威を否定し、壊れにくい構造を最初から入れておくためなのです。
モノづくり塾は、「壊さない・潰されない・腐らない」構造をあらかじめ設計し、その上に共同体を置いてます。
共同体を腐らせる因子は明確です。
- 権威
- 説教
- 評価
- 序列
- 承認
これらは共同体を必ず腐らせます。
さらに、不文律がひとつあります。
- 儲けない
お金は最も早く人を腐らせます。
だから儲けない構造を入れています。
売上のほとんどを設備維持と設備投資に回し、環境改善に使うのは、そのためです。
こうした設計思想を持つ構造体がモノづくり塾です。
そして今、この構造をシステムにまで展開しようとしています。
構造を見る目を養うために、全24巻の教科書も書きました。
歴史、文明、経済、政治、教育、言語など、幅広い領域を横断し、世界を「構造」として読む方法を示したものです。すでに24巻を書き終えました。
さらに、共同体の腐敗兆候を検知し、共同体の規範に従って応対するAI、日々の出来事を自動で取り込み学習するAI、共同体内部で循環する仮装通貨を開発しています。これらはすべて設計の段階で、共同体を腐らせる因子を排除しています。
これらと身体性(モノづくりの技能、自立、自給の技)を組み合わせれば、文化・文明・教育のバックアップ装置になります。それらは容易に複製や再起動ができます。
その特性を利用して、この仕組みを「1時間で複製できる」ことも計画しています。それがZIKUU Miniというコンセプト。
小さなコンピューター一台にすべてを封じ込め、手のひらの上に文明のバックアップ装置が乗ります。
山小屋にも、宇宙にも持っていける構造です。
人類初の試みかもしれません。
これが、いま私が取り組んでいることの本質です。
大袈裟に見えるかもしれませんが、実際には、便所掃除をしているおっさんが、構造に従って、一人で淡々と作業を進めているだけです。
SFのようですが、現実の話です。
最後に。
構造が決まると、やることが自然に決まります。
すると、動機や情熱や根性がなくても、体が自然に動き出します。やる気スイッチなどは不要なのです。