ZIKUUの出版部門『ZIKUU Press』から、小説4冊と論評書1冊をKindle本として発行します。
現在この5冊はレビュー待ち。数日以内に公開されるでしょう。
以下、それぞれの説明文です。
『現代にこそ必要な武士道―サンデルが語れなかったもの』(論評)
野球の神様だ。
宇宙人だ。
超人的だ。
連日のように、大谷翔平選手への賛辞と驚きが語られる。
欧米の思想からは理解しにくい大谷選手を日本の文化の側から見たときに見えるもの。
この一冊は、それを詳細に検討した。
突然、メジャーリーグに現れた大谷翔平という現象は、日本人が忘れかけているものを、もう一度人々の目の前に行きずり出した。
私たちに必要なのは、大きな哲学や思想、宗教的な救いではない。
必要なのは、武士の七徳のような、乱れを整える作法だ。
『メッセンジャー』(小説)
夜の峠で、彼は名乗らない、過去も語らない、ただ、一言だけを残して去る。
西伊豆の海沿いの町。
昼は静かなパソコン教室の講師として暮らす、影の薄い中年の男。
だが夜になると、重いVツインの鼓動とともに、峠に現れる――“魔物”。
抜かれる瞬間、空気が歪む。
風が止まる。
そして、世界の手触りが変わる。
夜の峠で出会うのは、家庭を失った少年、何も感じられなくなった青年、SNSから逃げてきた少女、進路や仕事に押し潰されそうな若者たち。
彼は彼らを導かない。
説教もしない。
与えるのは、ほんの短い会話と、最後の一言だけ。
その言葉は、なぜか胸の奥に残り、人生の向きをわずかに変えていく。
彼の内側には、すでに亡くなった姉と兄が“気配”として生きている。
柔らかく受け止める声と、迷いなく切り込む声。
その二つの判断が、夜の走りと言葉を静かに切り替える。
これは、救済の物語ではない。
勝利の物語でもない。
夜の境界で、生きている者同士が一瞬だけ交差し、
それぞれの現実へ戻っていく――
静かなオムニバス小説。
バイク小説であり、人間の判断構造を描いた物語であり、そして、わずかにSFの香りを帯びた“夜の譚”。
走る理由を失いかけた夜に、この物語は、そっと並走する。
『森の中の軌跡』(小説)
山の中に、男がひとり入った。
目的は、逃避でも隠遁でもない。
壊れたときに、もう一度立ち上げられる場所をつくること。
斧、鋸、溶接機、サーバー。
木と鉄とコードを並べ、
掃除と整地から始まる、静かな日々。
主人公スローハンドは、
語らず、誇らず、ただ手を動かす。
失敗し、直し、構造を理解し、また進む。
そこにあるのは成功譚ではなく、
「生活を成立させるための思考と段取り」だけだ。
物語の後半、ひとりの女性・サエが現れる。
傷つき、立ち止まり、動けなくなった彼女は、
この山の小屋で「空間」と「順序」を受け取る。
助言は少ない。
指導もない。
あるのは、戻す場所が決まった道具と、
やってもいい作業だけ。
やがて二人は気づく。
この場所は、誰かのための器だったのだと。
『森の中の軌跡』は、
事件も敵もない、静かな小説である。
だがそこには、
自立とは何か、
共同体とは何か、
文明をどう残すのか、
という問いが、確かな重さで置かれている。
派手な答えは出ない。
ただ、
「もう少しだけ整えておこう」
という言葉が残る。
手を動かす人へ。
考えすぎて止まってしまった人へ。
そして、次の世代に何かを渡したいと感じている人へ。
この本は、静かに効く。
『酔いどれ塾―ハットの中の奇跡』(小説)
港町の片隅にある、小さな工房兼塾。
夜になると、そこには酒と静かな会話、そして手を動かす時間が流れる。
人はここを、いつしか 「酔いどれ塾」 と呼ぶようになった。
理屈ばかりで生きてきた青年ユウは、年老いた職人スローハンドと、その妻サエに出会い、掃除、料理、研ぎ、削ること――
日々の作業を通して、「考える前に手を動かす」生き方を学んでいく。
この塾には、立派な教科書も、成功法則もない。
あるのは、・仲良くやれ
・怖さを忘れるな
・理に合わないことはするな
そんな短い言葉と、黙々と続く作業だけだ。
やがて時は流れ、スローハンドの灯は、AIシステム「ハット」へと受け渡される。
人の記憶、手順、思想は、データという形をまといながら、次の世代へと継がれていく。
本作は、ものづくり小説であり、師弟譚であり、静かなAI小説 でもある。
効率や成果を急ぐ現代に対し、「生きるとは何を残すことなのか」を、淡々と問いかける物語。
派手な展開はない。
だが、読み終えたあと、机を拭きたくなる。
道具を整えたくなる。
そして、少しだけ人に優しくなれる。
これは、失われつつある“手の記憶”と、それでも続いていく灯の物語。
『世界の終わり』(小説)
世界は、突然壊れたわけではない。
人々の判断の型が、少しずつ狂っていっただけだ。
郵便局の窓口で起きる些細な違和感。
学会で共有される、理解不能な理論。
静かな森の工房で組み立てられる、価値判断の構造。
本作『世界の終わり』は、
「人間はどのように判断を誤るのか」
「文明は、なぜ静かに暴走するのか」
を、小説という形式で描いた思考実験である。
物語の軸となるのは、三つのレイヤー。
現場で起きる認知のズレ(ACE)
判断の一貫性を保つための構造(Samurai Code)
人類全体を観測する上位AI(KAGURA)
主人公たちは、英雄ではない。
戦わず、叫ばず、支配もしない。
ただ構造を見つめ、判断を保留し、静かに行動する。
やがて世界は、暴力でも革命でもなく、価値判断そのものの再編によって終わりを迎える。
これは破滅の物語ではない。
「終わるべきものが、終わった」あとの物語だ。
哲学・AI・社会構造・人間観察が交差する、
静かで硬質なSF長編。
騒がしい物語に疲れた読者へ。
判断することに、少し疲れてしまった人へ。
この本は、考えるための静けさを取り戻すために書かれている。
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