所謂、地域おこし的な文脈の中でよく出てくるタイプのクラウドファンディング。
地方自治体の取り組みの中でもこういうものが紹介されることがある。
また環境教育・自然教育・平和教育などを掲げるNPOが、同様の活動していることも多い。
この投稿では、そういうものの一例を挙げて、分析を試みることにするので、その構造を見ていただきたい。
個人攻撃を目的としていないので、人名、組織名、場所がわかる情報は削除し、一部表現を変えています。
とあるクラファンプロジェクト
木炭から蓄電池をつくる
きっかけとしての「ナラ枯れ」。某所で「ナラ枯れ」と呼ばれる被害が広がったことがあった。 ナラ枯れの予防に加えて、ナラ枯れ材を有効に活用する取り組みとして木炭蓄電池にしたいと思い、某工業高等専門学校に相談しました。
ワークショップとして啓蒙活動
市内の子ども達向けに木炭蓄電池を作るワークショップを展開してきました。木炭蓄電池という技術を広く知ってもらい、自然エネルギーの普及に不可欠な蓄電について興味を持ってもらえるよう、小学生の夏休みの自由研究の題材として設計しスタートしました。 身近に使われている乾電池、鉛蓄電池やリチウムイオン電池など様々な蓄電技術がある中で、自分でも作ることができるという面白さを体感してもらうことで、エネルギーのDIYについて考えてもらえるきっかけ作りになると感じています。
この1年間の実践をもとに、大人向けのワークショップも併せて開発をしているところです。 同じ地域に、電気の作り方を全国の人々に教える活動を展開してきた団体もあり、炭焼きの活動などと協働しながら里山で行うエネルギーのDIYを「クラフトエネルギー」と呼称して広めていくための準備をしています。
リターンについて
私が木炭蓄電地について調べたいと思っていた当時、喉から手が出るほど欲しかったのが木炭蓄電地の実物を触る機会と作り方に関する実践的な知識でした。 某高専の先生方が発行している論文は読めましたが、理系でない自分にとっては分からないことだらけで、自分で調べて実験するのも限界がありました。 ニッチではあると思ってますが、自分達と同じように日本のどこかで木炭蓄地に興味を持っている人がいたら、「自分もやってみたい! 自分もやれそうだ!」と思ってもらえるモノをリターンにしたいと思い用意しました。
・小学生向けに作った「木炭蓄電の教科書」
・ナラ枯れ、炭焼き、賦活処理などを1冊にまとめた「里山クラフトエネルギー」
・各種ワークショップと現場の視察
どれもゼロから木炭蓄地の取り組みを始めるうえで、役に立つ情報だと思います。 このプロジェクトを応援してくれる人は全員が同志だと思いますので、ぜひこれから一緒に地産地消のエネルギー供給モデルを各地域で作っていきましょう。
応援していただいたお金でやりたいこと
応援いただいたお金で実現したいことが、「ビニールハウス栽培で必要な電力を、木炭蓄電地とポータブル電源の組み合わせによるオフグリッド電源で賄う」という挑戦です。 冒頭に書いたように、木炭蓄電地を単体で使おうとするとLED電球の点灯や電気柵など使用電力量が少ないものに限られてしまうのですが、その制約を打ち破る1つのアイデアとして、持ち運び可能なポータブル電源と組み合わせるという研究が某高専で行われています。 この研究をもとに、中山間地域の畑でビニールハウスの実験を行いたいと思っています。 ビニールハウスの換気装置、温度センサー、自動潅水システムなど、日常的に使われる電力を地域由来の木炭蓄電でまかなうことに成功したら、このシステムも他地域に広げていきたいと考えています。
これがどう見えるか
① エネルギー問題を「物語」で覆ってる
構造的にはこう:
- ナラ枯れ、エネルギー自給率低い→ 社会課題
- 炭 → 文化的に美しい
- DIY → 楽しい
- 地産地消 → 正しそう
電力システムとして成立するか?は別問題
② EDLCの限界を「軽く扱ってる」
本人も書いてるが
- エネルギー密度:Li-ionの1/100
これ、かなり致命的。 しかも発電効率の低いソーラーパネルとの組み合わせ。
何が起きるか
- デカい
- 重い
- 蓄えられない
これでは「電力システムにならない」
③ 用途が限定されすぎている
用途は:
- LED
- 電気柵
- センサー
「生活の末端しか支えられない」
④ 「エネルギーの地産地消」と言いながら成立していない
少し厳しく言うけれど、地産地消の“雰囲気”であって、実体は弱い。
なぜなら、
- 発電:太陽光頼み
- 蓄電:ほぼ役に立たないレベル
- 補助:ポータブル電源(=既存バッテリー)
つまり本体は結局Li-ionに依存してる。
構造的にこうなってる
理想: 木 → 炭 → 蓄電 → 自立
現実: 太陽光 → Li-ion → 補助として炭
⑤ 「作れる」ことと「使える」は別
- 作れる → 教育として価値あり
- 使える → インフラとして成立
このプロジェクトは前者を後者として語ってる可能性がある。 子供の理科実験の教材程度のものを、社会モデルという大きなものとして物語が作られている。
⑥ スケールしない設計
仮にうまくいっても:
- 労働集約(炭焼き)
- 手作業依存
- 個別最適
だから、広がらない。
趣味の領域。
⑦ 「クラフトエネルギー」という言葉の危うさ
「クラフト」という時点で
- 趣味
- 手作り
- 小規模
を内包してる。
なのに
エネルギーインフラを名乗っている
ここにズレがある。
まとめると
「気分先行で、技術が追いついてない」。
正確な位置づけ
ちゃんと言語化すると
- エネルギー供給モデルではない
- 教育・体験モデル
さらに踏み込むと
もしこれを
「これで生きていける」
と誤解させると
- エネルギー設計を誤る
- リスク管理が崩れる
さらに、判断力が育っていない子どもを巻き込めば、価値観や考え方や生き方を植え付ける危険性が大きい。個人的には、こういう大人たちが、自分たち同じ大人を再生産するのはやめていただきたいと思っている。
じゃあ価値はゼロか?
- 学び(理科実験)
- ローカル意識(共同作業)
- 技術理解(エネルギーの実態)
そういう価値はあるからゼロじゃない。
ここまでの結論
「良い教育プロジェクトかもしれないが、エネルギーインフラではない」
「遊びとしてはいいけど、それで文明を語ってはいけない」
これは体験教室ビジネスではないか
リターンにもあるように、
・小学生向けに作った「木炭蓄電の教科書」
・ナラ枯れ、炭焼き、賦活処理などを1冊にまとめた「里山クラフトエネルギー」
・各種ワークショップと現場の視察
明確にワークショップと書いている。
どうせ作るなら「エネルギーの教科書」にするべき。
限界費用が非常に小さいビジネスモデルである。
要するに自分のリスクは非常に小さい。
構造を言い切ると
「エネルギー」じゃなくて「体験商品」
典型的な構造
- 社会課題を置く
- ナラ枯れ
- エネルギー問題
- 技術っぽいものを出す
- 木炭蓄電
- EDLC
- 体験に落とす
- ワークショップ
- 自分で作れる
- 参加者に意味を与える
- 地産地消
- サステナブル
- 完成
本当の収益モデル
電力が本丸じゃない。
体験で稼ぐのが狙い。
- ワークショップ参加費
- 書籍
- 視察
- コミュニティ
なぜ成立するか
① 都市住民の欲求
- 自然に触れたい
- 何か作りたい
- 社会に貢献したい
- でも本気ではやらない
意識高い系に刺さる。
② 「ちょうどいい難しさ」
- 完全な素人でもできる
- でもちょっと技術っぽい
「やった感」が出る
③ 正義が乗っている
- 環境
- 地域
- 教育
批判されにくいし、気持ちいい。
正確に言うなら
「エネルギーを題材にした体験ビジネス」
だから、
- 教育として使う
- 体験としてやる
はOK。
- インフラとして信じる
- 実用と誤認する
はNG。
出資を募る事業として見るとどうか
① 初期投資を自力で回せない
ビニールハウスは、
- 数十万〜数百万円規模
- 農業なら最低限の設備
つまり、
「事業の入口」レベル。
それを
- クラファン頼み
- 寄付頼み
にしている時点で自走できる事業モデルではない。
事業者としての覚悟も実力も足りないと思う。
これは多くのNPOにも言える。
② キャッシュフローが見えない
事業なら本来こうなる
投資 → 生産 → 売上 → 回収 → 再投資
でもこれは、
ストーリー → 支援 → 実験 → ? → 次の支援?
③ 「研究」と「事業」が混ざってる
やってることは明らかに
- 実験
- 検証
- プロトタイプ
これは本来
研究フェーズ
なのに
「モデル」「普及」と言ってる。
④ スケール設計がない
仮に成功しても
- 誰が作る?
- いくらで売る?
- どう回収する?
設計が見えない。
ビニールハウス作る程度のことを自己資金でやれない。
「リスクを自分で負っていない」。
事業の本質
「自分のリスクで回す」
- 自己資金
- 借入
- 収益で回収
このプロジェクトの位置
事業ではなくて、コミュニティー活動 / プロジェクト。
これが完全にダメかというとそうでもない。
正しい位置づけをすればいい
- 教育事業 → 成立する
- 体験ビジネス → 成立する
- 研究活動 → 成立する
ただし
「エネルギー事業」と言った瞬間に違和感
もう一段踏み込むと
この手のプロジェクトの典型的な終わり方
- クラファン → 成功
- 実験 → やった
これを成功体験にすると、新しい物語を作って似たようなことを必ずやる。
そして、事業自体は、フェードアウトする。
事業が失敗した原因は、物語が悪かった、だからもっと美しい物語を書こうという学習をする。
そうじゃない。
事業そのものが成立しない。
本来あるべき姿
ちゃんとしたプロジェクトはこう進む。
① 実証フェーズ
- 自己資金 or 研究費でやる
- 小さく試す
- 成否を判断する
② 成立確認
- 技術的に成立するか
- 経済的に成立するか
③ 普及フェーズ
- 設備投資が必要になる
- 人材が必要になる
- ここで初めて外部資金の意味が出る
この案件の場合、
思いつき → クラファン → 実証(未完) → 普及と言い始める
実証が終わってないのに普及を語りはじめている。
もう一段踏み込むと
これは心理的にもよくある
- 面白いことを思いつく
- 仲間内で盛り上がる
- 「これはいける」と思う
- → そのまま外に出す
そして検証を飛ばす。
この支援金は、実体への対価ではなく、物語への共感費用に見える。
- 商品じゃない、投資でもない、応援だからOK。
- 挑戦だから、いいことだから、失敗しても許される。
- 関わった感、貢献した感があるから、支援者は満足する。
そういう構造。
自分ならどうするか
設計書を出す、部品表・材料表を出す、誰でも作れる状態にする、装置として成立したものを見せる。
その上で、広めるための費用はこれだけ必要なので応援してください、とする。 物語を語らずに実体を見せる。
歴史と物理
「資源は“あるように見える”だけで、エネルギーにすると一瞬で枯渇する」
歴史が示していること
刀鍛冶
- 炭(高品質な木炭)が必要
- → 山を伐る
- → 足りなくなる
寺社建築(飛鳥時代 / 奈良時代)
- 巨大木材が必要
- → 近場から消える
- → 遠距離輸送
需要が集中すると、ローカル資源は持たない。
なぜそうなるか
これはエネルギー密度の問題。
木材は
- 見た目:大量にある
- 実際:エネルギーとしては薄い
だから、大量に燃やさないと意味が出ない。
① 見た目の錯覚
- 木が多い → 使える気がする
② 実際
- 成長速度が遅い
- 伐採は一瞬
ストック型資源ではない
もう一段踏み込むと
炭にする時点でロスが大きい。
- 木 → 炭でエネルギー減る
- 加工コストもかかる
効率がさらに悪化。
「木をエネルギーに使う=環境負荷が高い」
(小規模なら成立するが、スケールすると環境破壊)
木炭蓄電の構造は
木 → 炭 → 活性炭 → 蓄電(低密度)
低効率 × 低密度
「それ、持続しないよね?」
しかも、木から活性炭にするまでに、エネルギーを投入するので、エネルギーを減らしている可能性すらある。
このプロジェクトを立案した人は、陶芸用電気釜で炭を焼いたと言っているが、投入したエネルギーの方が取り出せるエネルギーより大きいかもしれない。
エネルギー収支を考えるのは基本。
本来の木の正しい使い方は、
- 建材(長期固定)
- 道具(高付加価値)
- 必要最低限の燃料
エネルギーにするのは最後の手段。
「森はエネルギー源ではなく、構造材として見るもの」
余った木で湯を沸かしてコーヒーを入れる、束の間の暖を取る、みたいなことなら問題はない。
心理
ナラティブの自己同一化
- 最初は集客のための説明
- 活動の意味づけに変化
- 最後は本人もそれを現実として信じる
これ、意識高い系の人によくある。
実際にやるとどうなるか
- Wh
- F
- V
- 効率
この辺は、慣れてない人には実感がない。
でも、
- バケツ何個分
- 収納箱何台分
- 軽トラ荷台の何割
まで落とすと、伝わるかもしれない。
これはエネルギー密度の話。
1. 必要電力量
まず負荷を仮定する。
例:
- LED照明 10W × 5時間 = 50Wh
- センサー・制御 5W × 24時間 = 120Wh
- 小型ファン 20W × 4時間 = 80Wh
合計 250Wh/日
2. 木炭蓄電の体積換算
ここで、
- 1Lあたり何Whか
- 1kgあたり何Whか
を仮定して計算する。
すると、
- 250Whに必要な容積
- 1日分
- 3日分
- 1週間分
が出せる。
3. 他方式との比較
同じ250Whを
- Li-ion
- 鉛
- 木炭EDLC
で並べる。
ざっくり現実値
木炭EDLCは1 Wh / L(甘め)
※実際はもっと低い可能性もある
ケース①:LED照明(最小構成)
条件
10W × 5時間 = 50Wh
必要容積
50Wh → 50L
直感的に言うと
- 灯油ポリタンク(18L)× 約3個
- 小型クーラーボックス1個分
「照明1日でこれ」
ケース②:電気柵(よくある用途)
条件
平均消費:5W × 24h = 120Wh
容積
120Wh → 120L
見え方
- ポリタンク × 約7個
- ドラム缶の半分
「常設はギリ成立か」
ケース③:ビニールハウス制御(軽め)
条件
センサー:5W × 24h = 120Wh ファン:20W × 4h = 80Wh
合計:200Wh
容積
200Wh → 200L
見え方
- ドラム缶1本(200L)
「1日分でこれ」
ケース④:3日バッファ(現実的に必要)
条件
200Wh × 3日 = 600Wh
容積
600L
見え方
- ドラム缶3本
- 軽トラ荷台のかなりの部分
比較
200Whは、
Li-ionなら約 1〜2L
木炭EDLCなら約 200L
その差は、100倍〜200倍。 石油と比較したら10000倍くらいの差。
用途適合性
使える領域
- LED
- 電気柵
- 超低消費IoT
無理な領域
- 農業制御の主電源
- 継続運用
- バッファ運用
用途:ハウス制御(200Wh/日)
必要容積:200L(1日)
3日運用:600L(ドラム缶3本)
これ、広がりますか?
総括
案件の中身(収益エンジン)
ここが本体。
- 5万円のワークショップ
- 5千円の小学生向け教科書
ちなみにZIKUUの中高生向け基礎教科書エネルギー編は2冊で198円。
→ https://amzn.asia/d/080Db5Hk
→ https://amzn.asia/d/02YvnVL7
外側(ナラティブ)
- 地産地消
- エネルギー
- サステナブル
集客と正当化のための美しい言葉。
技術(コンテンツ)
- 木炭EDLC
- 小型ソーラー
実際は“題材”として機能。
技術っぽいけど、新規性はない。
これはこれで成立している
- 体験としては面白い
- 参加者は満足する
- 収益も出る
体験ビジネスとしては普通に成立。
ただし、それを「インフラ」や「モデル」と言い始めると誇大広告。
つまり、これは体験教室ビジネス。
美しい物語を纏った、正しそうな行為で、集客する体験ビジネス。
「技術テーマを使った体験設計は美味しい」という成功体験があるのかもしれない。
ZIKUUからの提案
以下の3つを学べ。
- エネルギー密度
- エネルギー収支
- 用途適合性
その上で、行動力を活かして挑戦せよ。
そして、リスクを取れ、子どもを巻き込むな。
締めの言葉
物語で集めた金で、物理は回らない。
以上