モノづくりに興味がある方に気に留めておいて欲しいこと

これまで数万年、人類は文明を築いてきました。その文明の上に様々な文化が生まれました。

縄文文化は土を焼いて容器を作ることができるという文明があったからこそ成立した文化です。これは我々の歴史上、すべての局面で言えることです。

言い換えれば、文明なしの文化は存在し難い。

文明の利器を使わない文化もあるじゃないかと言われるかもしれませんが、それは極少数です。石器時代(石器も文明ですが)の人々が、木の実を採取するときに鼻歌を歌ったなんていうのも文化かもしれませんが、そういうのは少ない。大抵は文明の恩恵として得られた富や時間がないと文化は生まれません。

だから、文化を語るなら文明の理解も必要です。

その文明ですが、資源(材料資源とエネルギー資源)と道具でほぼ決まります。

資源の採取や加工と使い方、道具の制作と使い方。これらが文明の成立において支配的な要素です。

ラッコは石を使って貝を割ります。カラスは石を武器のように投げ落とします。猿は木の枝を振り回します。

人間以外に、こういった動物たちも道具を使います。

人間は道具を作ります。道具を作るための道具も作る。人間は、石油・石炭・天然ガス・ウランなどのエネルギー資源を採掘して熱や電気を作る。石油を生成して樹脂や繊維を作る。これらの特性(能力)は他の動物にはないものです。

つまり、人間が人間らしくあるためには、資源と道具を使いこなすことがその条件ということになります。

ホームセンターで材料と道具を買ってきて何かを作る。作る行為自体は人間らしいですが、もっと人間らしくなるためには、材料を自分で調達して加工するとか、道具を自分で作るなどの行為を加えます。そういうことの繰り返しが文明を作り、文化を作ります。

モノづくりに興味がある方は、文化・文明・資源・道具+人間という5つの要素を同時に意識するよう気に留めておかれたら良いと思います。これに歴史を加えるとベストです。そうすれば、目の前にある単なるモノの先に様々なものが見えてくるはずです。

また、文明を作り文化を作る行為が連続することが「守る」ということです。

法隆寺宮大工の故石岡常一氏は「ただ古いだけなら、その辺に転がっている石の方が古い。古いから良いのではなくて、人間が努力して作ったというのが良い」といった主旨のことを言っていますが、「昔ながらの」「伝統的な」モノやコトも、人間の工夫や改善の結果ですから、「昔ながらの」「伝統的な」モノやコトを踏襲しつつ改善を繰り返すことが「守る」に通じます。「ずっと同じことをやっているだけ」ではダメだということです。

現代の文明はシリコン文明と言っても良いでしょう。鉄の生産量をシリコン生産量が超えて久しいです。いずれ量子文明に切り替わっていくでしょうね。

昔ながらの手仕事で静かに木を削るみたいなのも風情があって良いと思いますが、それだけでは文明を作れませんから、是非、「昔ながらの」がお好きな方も、最新の技術や科学にも関心を持ってください。

私の能力では最先端を追うことができそうにありませんが、最先端の一歩後ろ辺りのことはフォローしていきます。

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