自給率のこと

日本の食糧自給率は38%程度と言われています。しかし、作物や畜産動物の育成に必要な種や飼料などの大部分は輸入に頼っており、実質的な自給率は1桁台となります。特に東京都では1%に満たないレベルです。

私は食糧だけにとどまらず、生活に必要なすべての物資の自給率について関心を持っています。

古くは日本は自給率100%を誇っていました。日本人は、日本列島や近海で採れる資源のみで暮らしていました。

時代が進み、外国との交易が増え、自給率は低下していきました。 この変化は「物資交易の拡大」と「技術交易の拡大(国際分業)」という2つの要因が重なり合ったものです。

自給率が高いということは、戦争や国際紛争、政府や一部の人たちの独占、天災などによる影響を受けにくい安定した社会を意味します。安定した社会では、将来への悲観を軽減し、若者が自殺する可能性を減らし、安心して出産・育児を行うことができ、勉強や仕事にも集中できます。幸せを実感しながら暮らせるでしょう。

現代においては、この自給率は食糧だけでなくエネルギーや生産活動においても極めて低い状況です。 私は、「物資交易の縮小」と「技術交易の拡大(協業と合業)」を組み合わせた全体的な自給率向上を目指すのが良いと思っています。合業とは、一人で複数の分野の業を行うといった意味です。

IT化が進んだ現代では、情報の伝達速度や共有規模が飛躍的に増しているため、技術交易の拡大をするための条件が整っていると考えられます。 しかし、資源については、交易に頼らざるを得ない部分もあり、物資交易を極限まで縮小するのは難しいでしょう。しかし、売る・買う(交易)機会を自分で作ることを変えることで、大幅に減らせる可能性があります。

簡単に想像できることだと思いますが、「欲しいを作りたい」という欲望の方向を変えると、完全自給は不可能なので、延々と学習と設備投資を繰り返すことになります。

分業を進めて相互依存することがあたかも良い方向性のように言われてきましたが、本当にそうでしょうか。相互依存するということは、依存関係のあるどこかで問題が起きるとその影響を受けることになり、自立性が損なわれることになりかねません。会社の経理を外部委託すると、2つの会社の間で経理業務サービスの取引が発生し、経理業務がGDPに上乗せされます。そうするとGDPが伸びたと認識することになりますが、行われる仕事量には変化がありません。同じGDPを伸ばすなら、設備投資の方が実体経済の伸びに直接貢献するのではないでしょうか。

モノづくり塾が積極的に取り組んでいるモノづくり普及活動は、ITを使ってモノづくり技術の取引(交換、共有、交流)が安定した社会の構築に必要だと考えて始まったものです。そして、この取り組みは永遠に続くという性質を持っています。

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