知人・友人などにモノづくり塾『ZIKUU』の構想を話すと「夢が叶うといいですね」というような反応をもらうんですが、夢という温いというか情緒的というか、そんな気分ではないんです。
例えば伝統工芸。昔から続いてきた伝統的な職人さんの技術は、極稀にそれをやりたいという若者がいてニュースになったりしますが、全体として低調です。漆掻きの道具や漆刷毛を作る職人がほとんどいないとか、絶滅危惧種のような仕事がたくさんあります。
例えば半導体。アップルなどのファブレス企業(半導体製造装置を持たずに設計だけを行う企業)から半導体製造を受注している台湾のTSMCや韓国のサムスンに日本は置いていかれています。
例えば工業生産。依然として加工装置など強い分野もありますが、サプライチェーンを通じて図面のデータが共有できていない(CAD/CAMの普及・浸透が遅れている)などの非効率を指摘する人もいます。
例えば基礎研究。先端の研究というのは「何が出てくるかわからない」から先端なのであって、「役に立つ研究」に予算を付けるという国のやり方では先端を走れません。
例えば物流。各社各様の梱包のせいでパレットに積みにくくて物流倉庫の効率が上がらない、トラックの荷室に収まりが悪いからトラック荷室の利用率が低くてトラックドライバーも運送会社も利益が薄いというような状況だそうです。
ZIKUUでは多面的にモノづくりを捉えて学ぶ機会を作ります。未来の希望である青少年の挑戦や探求の端緒を開こうというわけです。私自身がすべての分野でプロならば良いのでしょうが、そうではないので、入口まで案内するのが精一杯ということも多いでしょう。興味を持てたら高専や大学に行って勉強を続ける、技術者として企業に入って研究開発を続ける、で良いのです。あるいは塾生たちが起業して製品を作っても良い。
最近の企業経営者は近い将来仕事の半分がなくなると予想しているそうです。予想しているなら準備もしているかもしれませんし、無くなる(無くす)仕事を認識しているかもしれません。
産業や技術が伸びなかったら日本は終わりです。生き残りを掛けることは夢を見ることではありません。