10トンの薪

日本人が一人あたり一年に使っているエネルギーは、おおよそ 4〜5万kWh と言われています。
これは熱量にすると 約4000万キロカロリー くらいです。

では、このエネルギーをすべて薪で賄うとどうなるでしょうか。

乾燥した薪1kgのエネルギーはおよそ 4kWh です。
つまり、年間5万kWhを薪で賄うとすると

約10〜12トンの薪

が必要になります。

さて、日本の森林を考えてみます。

日本の森林資源を人口で割ると、一人あたりの森林蓄積はだいたい 20〜50トン程度 です。
つまり理屈の上では、日本人が全員薪を燃やし始めたら

数年で日本の森林は消えます。

もちろん森林は成長します。
日本の森林の年間成長量は、平均すると 5%程度 と言われています。

仮に一人50トンの森林を持っていたとしても、
年間に増えるのは

2.5トン程度

です。

つまり森林を減らさない範囲で使える薪エネルギーは

現在のエネルギー消費の4分の1以下

になります。

現代社会をそのエネルギー量で維持するのは、かなり難しいでしょう。
生活を300年前に戻すか、平均寿命を40〜50歳くらいにするか、というレベルの話になります。

さらに言えば、家を建てるだけでも膨大なエネルギーを使います。
現代の小さな家でも、昔なら城を建てるくらいのエネルギーを消費します。

つまり「少し節約する」程度ではどうにもならない。
山火事にバケツで水をかけるようなものです。


自然エネルギーの誤解

では薪がダメなら、太陽光や風力を使えばいいのでしょうか。

ここで少し考えないといけないことがあります。

地球の自然環境は、基本的に 太陽から降ってくるエネルギーの量 で成り立っています。
風も雨も植物も、すべてそのエネルギーの流れの中で動いています。

つまり、太陽光発電や風力発電というのは
その自然のエネルギーの流れを 人間側に引き込む行為 です。

もちろん人類が使っているエネルギーは、地球全体の太陽エネルギーに比べれば小さいものです。
しかし問題はそこではありません。

太陽光や風力は エネルギー密度が非常に低い のです。

同じエネルギーを得るためには

  • 広い土地
  • 大量の設備
  • 大量の資材

が必要になります。

つまり「自然エネルギー」という言葉の印象とは裏腹に、
実際には かなり大きな物理的装置 を必要とします。


エコと節約の本質

もう一つ、よく誤解されることがあります。

それは エネルギーを減らす=活動を減らす ということです。

文明はエネルギーで動いています。
エネルギーを減らすということは

  • 生産を減らす
  • 移動を減らす
  • 建設を減らす

ということになります。

つまり経済活動そのものが縮みます。

もちろん個人が節約するのは自由です。
節約が美徳だと思う人もいるでしょう。

しかしそれを社会全体の方針として押し付けると

社会全体の活動量を減らす

ことになります。

しかもその過程で

  • 補助金
  • 研究費
  • エコ商品

などをめぐって、新しい利権が生まれることも多い。

結果として

社会は貧しくなり、利権だけが残る

ということも起きます。


エネルギー問題の出発点

エネルギー問題を議論するなら、まず最初に確認すべきことがあります。

それは

人間社会はどれだけのエネルギーを使っているのか

ということです。

この量を正面から見ないまま

  • エコ
  • サステナブル
  • 節約

といった言葉だけで議論すると、話は簡単に道徳やイメージの世界に流れてしまいます。

未来の技術がどうなるかはわかりません。
もしかすると新しいエネルギー源が見つかるかもしれません。

しかし少なくとも今の時点では

文明のエネルギー問題は、そんなに簡単な話ではない

というのが、現実に近い認識だと思います。