自然エネルギー、再生可能エネルギーといった言葉が、様々な文脈で出てくるが、その多くが愚かな議論だと感じる。自然ツーリズム系、環境ツーリズム系のNPOなどがよくやっている。
そういう活動に、「地域おこしだから」などと行って予算をつけるのもやめてもらいたい。
今回はなぜ愚かなのかをまとめてみる。
ポルトガルは再エネだという話
ポルトガルは所謂自然エネルギーで100%の電力を賄ってるんだから、日本もやれという話。
似たような話をよく目耳にすると思う。
電力消費量の比較
まずは決定的な数字を示す。
ポルトガルの年間電力消費
約50,000〜55,000 GWh
日本の年間電力消費
約900,000〜1,000,000 GWh
比率にすると18倍〜20倍の開きがある。
人口規模の比較
| 国 | 人口 | 電力 |
| ポルトガル | 約1000万人 | 約50,000GWh |
| 日本 | 約1億2500万人 | 約950,000GWh |
日本は、
- 人口で約12倍
- 電力で約18倍
これは、人口が多い、産業が多いということ。
「ポルトガルは100%再エネ」は誤解を招く表現
実態は
- 一部の期間だけ100%
- 年間平均は 60〜70%
しかも内訳は
- 水力
- 風力
- 輸入電力
です。
つまり
水力が成立する地形 + 小さい電力需要
が前提。
日本で同じことをやると起きること
日本の電力需要は約1,000,000GWh。
これを再エネだけでやるとすると
風力
膨大な洋上風力
太陽光
山・農地を大規模破壊
水力
ほぼ開発済みで開発余地なし。
結果として
- 山の太陽光パネル
- 森林伐採
- 景観破壊
が既に起きている。
エネルギー議論でよくある錯覚
再エネ議論は大体この3つを無視することが多い。
① 総電力量
「割合」しか言わない。
② 国土条件
水力できるかどうか。
③ 電力密度
都市化・産業。
日本は
- 高密度人口
- 高密度産業
なので、ヨーロッパ型エネルギーモデルがそのまま適用できない。
本質はエネルギー密度。
エネルギー源の土地効率を表にする。
| 電源 | W/m2 |
| 原子力 | 1000 |
| ガス | 500 |
| 風力 | 1〜2 |
| 太陽光 | 5〜10 |
つまり、再エネは土地を食う電源。
日本のような
- 山が多い
- 平地が少ない
- 人口密度が高い
国では不利。
日本が再エネ100%を太陽光で賄うとどうなるか
1. 日本の電力消費
日本の年間電力消費
約 950,000 GWh / 年
2. 太陽光発電の実効発電量
日本の太陽光は、設備容量1GWあたり
年間発電量 ≈ 1.2 TWh
(設備利用率 約14%)
3. 必要な太陽光設備容量
950,000 GWh を作るには
つまり約800 GWが必要。
4. 日本の太陽光設置面積
太陽光1GWに必要な土地
約10 km²
なので
必要な面積
約 8,000 km²
日本の国土と比較
日本の面積
378,000 km²
割合
一見すると
たった2%
に見える。
ここが再エネ議論のトリック。
しかし問題は「使える土地」
日本の土地
| 種類 | 面積 |
|---|---|
| 森林 | 67% |
| 山地 | 多数 |
| 平地 | 約12% |
つまり
人間が使える土地は約45,000 km²
そこに
太陽光 8,000 km²
を置く。
割合8000÷45000≈18
日本の可住地の約20%を太陽光にする必要。
さらに現実
しかもこれは
昼しか発電しない
なので
夜のためには
- 蓄電池
- 水素
- 揚水
が必要。
蓄電池でやるなら
必要量は
数十〜百TWh
蓄電池の現実
世界最大の蓄電池でも
数百MWh
日本に必要な量
100,000 GWh
つまり
100万倍規模
つまり現実は
太陽光100%をやるには
- 山を削る
- 森林伐採
- 農地転用
- 巨大蓄電池国家
になる。
再エネが成功する条件
1. 砂漠型(太陽光が成立する国)
例
- チリ
- UAE
- オーストラリア
- アメリカ南西部
特徴
- 人が住んでいない
- 雨が少ない
- 平坦
太陽光の土地効率が低くても問題にならない。
土地が余っているから。
2. 水力型(再エネ比率が高い国)
例
- ノルウェー
- アイスランド
- カナダ
- スイス
特徴
- 人口が少ない
- 山+水量が多い
- 大規模ダム可能
ノルウェーの電力は
90%以上水力
3. 風力型(北欧・北海)
例
- デンマーク
- 英国
- オランダ
特徴
- 遠浅の海
- 強い偏西風
- 人口密度が比較的低い
北海は
世界最大の洋上風力適地
4. 日本の地理条件
日本の特徴
- 国土の 約67%が森林
- 平地が少ない
- 山が急峻
- 台風
- 地震
- 土砂災害
つまり
土地が足りない
5. エネルギーの本質
エネルギー問題は
政治ではなく物理
です。
重要なのは
エネルギー密度
| 発電 | 面積効率 |
|---|---|
| 原子力 | 非常に高い |
| 火力 | 高い |
| 水力 | 中 |
| 太陽光 | 低 |
| 風力 | 非常に低 |
だから
人口密度が高い国ほど
高密度エネルギーが必要
6. 日本が世界で特殊な理由
日本は
- 人口密度が高い
- 平地が少ない
- エネルギー資源が少ない
この三つが同時に成立する世界でも珍しい国。
まとめると
再エネ推進論は多くの場合
「ヨーロッパの例」
を出します。
でもヨーロッパは
- 平地が多い
- 国境で電力融通
- 陸続き
日本は
孤立した島の都市国家
に近い。
無理なんです。
この問題の恐ろしさ
自然エネルギー、再エネといえば、綺麗そうで賢そうだと思っている風の人が多いが、この問題の本当の恐ろしさは、
子どもたちの未来を奪う
こと。
経済規模はエネルギー使用量とほぼ比例する。
つまり、再エネという、薄いエネルギーを推進する行為は、経済を停滞・衰退させ、子どもたちの将来の仕事を奪う。
大人たちの愚かな思考や行為の犠牲になるのは、その子どもたちだということ。
今回書いたようなことは、ZIKUU中高生向け基礎教科書のエネルギーの巻に書いています。1冊99円の電子書籍が2冊。
中高生向け基礎教科書 01.エネルギー
中高生向け基礎教科書 02.エネルギーの物語と現実
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