制約は希望

ZIKUUがある山梨県では、会社の休廃業・解散の件数が過去10年で最大になった。
赤字倒産ではなく、黒字・資産超過のまま事業を諦めているケースが増えているとか。

20代の超過転出数では、都留市や上野原市は全国の自治体の中で上位のランクにある。

私が、ZIKUU建屋の建設に入った頃は、上野原市の人口や約22,000人だったが、そこから3年も経っていない現在は約20,500人と1500人も減った。これは約7%の人口減少だ。

最近、山梨県をはじめ、地方の移住、二拠点生活、地域おこしなどの広告が増えている。

以前の投稿で文明密度という考え方を示した。

地方では、空き家の数、人口、生産年齢人口、高齢化、関係人口という言葉が出てくるけれど、私は文明密度こそが重要だと思っている。


効果の薄いことを真面目にやってはいないか

予算と人員を割いて効果の薄いことを真面目にやってはいないか。

関係人口を増やすという名目で、自然体験ワークショップ、グルメツアーみたいなことを企画することが多いけれど、例えば、遊びに来て、一人平均1000円を落としたとする。
10,000人で1,000万円。
市の人口の半分にあたる人が来ても1,000万円。

一方で、私のような事業者が一人やってくる場合を考える。
初年度に一人で1,000万円くらい使う。
次年度からは支出額は減るが、事業を続ける限りずっと支出する。

10,000人の関係人口のインパクトと、1人の事業者のインパクトがほぼ同じ。

私なら、迷わず、事業者を5人呼ぶ方に重心を置く。

ZIKUUみたいなものを常設すると、材料を買う、工具を買う、建物を直す、燃料や電気を使う、塾生や家族が食事をする、壊れたものを地元で修理する、さらに、そこで身についた供給力が別の仕事や生産を生む。
それを何周もすることになる。

関係人口を増やすイベント型の施策は効果が薄いと思うが、どうだろうか?


田舎や自然の消費

よく田舎にやってきて、NPOなどが主催する集まりに参加し、田舎を味わう人がいる。

  • 自然とのふれあい
  • 美味しい水
  • 自然農で育てた野菜
  • 簡単な手仕事

そういうものを体験して帰っていく。

そういうものが必要と感じるのは理解できるけれど、都会に住んで、便利で、アマゾンのダンボールがたくさん届く暮らしをするのと、田舎の暮らしはまったく違う。

  • 車がないと何もできない
  • 草刈りは大変
  • 鹿やイノシシに畑を荒らされる
  • 熊だって出る
  • 冬になれば雪や凍結で動けない
  • 地域の人との信頼関係が持てないと耕運機を貸してもらえない
  • コンビニはない
  • スーパーマーケットもない
  • 近くに病院がない
  • バスはめったに来ない

こういうことを考えずに、時々田舎にやってきて、田舎を消費する。
面倒くさい現実を引き受けて暮らす気はない。

実際に地域おこしをやっているNPOのメンバーですら、少し離れた便利な町に住んでいたりする。

でも、地域おこし系NPOにとってみれば、住む気はないけど田舎を消費したい都会人は良い顧客を生む場所ということになる。

本気で地域をおこす動機は目減りする。


文明密度とは

繰り返しになるので長々と書かないが、ざっくり言ってしまえば、文明密度とは、

  • 作れる人
  • 修理できる人
  • 教えられる人
  • 運べる人
  • 継承できる人

の束の太さだ。

これは自治体が発表する統計には出てこない指標だ。

行政の施策はどうしても「人数」「関係人口」「観光客数」といった量的指標で評価されがちだけれど、供給力という視点では、「何人増えたか」よりも「何が作れるようになったか」「何を継承できるようになったか」のほうが重要な指標になる。

考え方を変えてはどうか?


応援したいこと

自然食品が、有機栽培が、カフェが、パン屋が。

そういうのは行政が予算や時間を割いて支援するようなことではない。
予算はいつも足りないんだから。

そうではなくて、

5人の人が拠点を作って、

  • ロボットを設計・製作する
  • AIを動かすサーバーを運用する
  • モビリティを自作・改造する
  • 木工・金工・電子工作を行う
  • 地域で材料や部品を調達する
  • 次の人を育てる

みたいなことを応援してどうか。

もともとのZIKUUの構想は、普通のコワーキングスペースやスタートアップ施設とは違い、

  • AI(Context Computing)
  • ロボティクス
  • エネルギー
  • モビリティ
  • 木工・金工・レザー
  • 教育

が一つの場所で循環することを目指しているから、方向性が似ていることもあるが、本質的には文明密度を上げるのが目標。

東京から日帰りできる距離でありながら、音や煙を出せる土地があり、工作や実験ができる上野原のような土地は好都合だ。

是非、5人、上野原で事業を始めませんか?

NPOを作らなくても、補助金や助成金がなくてもやれる。

行政が応援しなくても、私は応援します。

大きな企業を誘致すると、その企業の経営判断で撤退することもあるけれど、5人の作り手がそれぞれ独立した事業を持ち、互いに支え合う生態系なら、一人が苦しくなっても全体がすぐには崩れない。


制約が良い

私はこう考える。

人口が減っている

一人あたりが使えるリソースが増える!

老人ばかり

老人支援ロボットの実験や検証に適した環境だ!

交通が不便

静かに研究や開発をするのに好都合!
モビリティの実験もできる!

制約は悪いことだと考えるのではなくて、制約があるからこそできることがあると考えてはどうか。

制約が希望の条件に見えてこないか?


希望と職

前にも書いたが、

都会の大学を卒業した若い女性に、地場の建設会社の営業事務はどう?が刺さるか。

移住者を呼ぶ前に、自分の子供が「ここで働きたい」という場が地元にあるか。

人は希望と職がないところには住まない。

地域おこしをやっている人、地方行政をやっている人。

希望と職を作るという行為を、どれだけやってきたのか、やっているのか。

自問自答してはいかがか。

コメントする